隣家にはみ出した庭木の枝と根|剪定前に確認すべき規定と手順
隣家の木が、いつの間にか自分の敷地の上まで伸びていることがあります。屋根に接触し、雨樋に葉が溜まり、洗濯物の上に影を落とすといった状態です。 この場合、手の届く枝を自分で切ってよいのかどうかは、「枝か根か」によって異なり、さらに枝については踏むべき手順が法律で定められています。 本ページでは、剪定前に確認すべき事項を順に整理します。
本ページは一般的な考え方を整理したものであり、個別の事案について法的な判断を示すものではありません。 相手との話し合いがまとまらない場合や、費用の負担で争いになりそうな場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。
枝と根では扱いが異なります
同じ越境でも、地上の枝と地中の根とでは、民法上の扱いが分かれています。 境界を越えた枝については、その木の所有者に切除させることができるとされ、越境された側がただちに自分で切ってよいとはされていません。 一方、境界を越えた根については、越境された側が自ら切り取ることができると定められています。
| 越境しているもの | 基本の考え方 |
|---|---|
| 枝 | まず木の所有者に切除してもらう。一定の場合に限り、越境された側が自ら切り取れる。 |
| 根 | 越境された側が自ら切り取ることができる。 |
なお、根を切ることが認められているとしても、木そのものを枯らすほど切ってよいという意味ではありません。 塀や舗装を押し上げているといった実害がある場合でも、どこまで切るかは現場を確認して判断する必要があります。
民法改正による変更点
従来は、越境した枝を切除してもらえないまま状況が進展しないという事態が起こりやすい仕組みでした。 所有者が応じない場合や、そもそも所有者と連絡が取れない場合に、越境された側が取れる手段が限られていたためです。
2021年の民法改正では、この点が見直されました。所有者に催告しても相当の期間内に切除されないとき、所有者やその所在を知ることができないとき、急迫の事情があるときには、越境された側が自ら枝を切り取れることが明文で定められています。 この改正は2023年4月1日から施行されています。
重要なのは、自分で切除できる場面が広がったとはいえ、「まず所有者に切除してもらう」という原則は変わっていない点です。 手順を省略すると、切除した行為そのものが問題となる可能性があります。
枝を切除してもらうまでの進め方
- 01
現状を記録する
どの枝がどこまで越境しているのかを、写真と日付で記録します。後に話し合いになった際、口頭の記憶より記録のほうが確実です。屋根や外壁に接触している、雨樋に葉が溜まっているといった実害があれば、その状態も撮影しておきます。
- 02
所有者に伝える
まずは木の所有者に切除してもらうよう伝えます。民法の規定でも、越境した枝は所有者に切除させることが原則です。近隣との関係において摩擦が生じにくいのも、この順序です。口頭で伝わりにくい場合は、書面にして記録を残す方法もあります。
- 03
相当の期間を置く
伝えた後は、切除のための期間を設けます。すぐに切除されないからといって、直ちに自分で切ってよいわけではありません。どの程度が相当な期間かは事情によるため、判断に迷う場合は専門家にご相談ください。
- 04
それでも解決しない場合
所有者に催告しても相当の期間内に切除されない場合、所有者やその所在が分からない場合、急迫の事情がある場合には、越境された側が自ら枝を切り取ることが認められています。ただし、自分の事案が要件を満たすかどうかの判断は慎重に行う必要があります。
- 05
費用の負担を確認する
切除にかかった費用を誰が負担するかは、事案によって扱いが分かれやすい部分です。争いになりそうな場合は、作業に着手する前に専門家へ相談しておくほうが安全です。
自分の木がはみ出している場合
越境は、される側だけの問題ではありません。自宅の庭の木が隣家へ伸びていれば、同じ問題が逆の立場で生じます。 自宅側で行える対応は、次のとおりです。
定期的に枝の先端を確認する
越境は突然起きるものではなく、毎年少しずつ伸びた結果です。剪定の際に境界側の枝を意識して整えておけば、問題になることはありません。
指摘を受けたら早めに対応する
隣家から申し入れがあった場合、放置すると相手が自ら切除できる要件に近づいていきます。自分の木を自分の判断で整えられるうちに対応するほうが、樹形の面でも有利です。
剪定する位置を業者と相談する
境界ぎりぎりで剪定すると、樹形が不自然になったり、切り口から傷みが生じたりすることがあります。どこで剪定すれば木への負担が少ないかは樹種によって異なるため、剪定の適期とあわせて相談してください。
根が伸びる方向も考慮する
地上の枝だけでなく、根も境界を越えます。塀や舗装を押し上げることもあるため、境界付近に植える木を選ぶ段階から、根の張り方を考慮しておくと、後の管理が容易になります。
樹種ごとの剪定の適期は庭木の剪定費用と適した時期にまとめています。剪定の時期を誤ると、木の傷みにつながります。
落ち葉・果実・道路への越境
落ち葉が隣地に入る
落ち葉そのものは、枝の越境とは別の問題として扱われます。法律上の解決より、日頃の声かけと剪定による量の抑制が現実的な対処となります。毎年同じ時期に落葉する場合は、その前に一度剪定しておくと、苦情につながりにくくなります。
果実が越境した枝になっている
越境した枝になった実を無断で取ってよいかは、枝そのものの扱いとは別の論点です。トラブルの原因になりやすいため、気になる場合は自分の判断で採らず、所有者にご確認ください。
道路や歩道にはみ出している
公道にかかる枝は、通行の妨げや視界の遮りにつながります。自分の敷地の木であれば管理者として対応が求められ、他人の木で危険を感じる場合は、道路を管理する自治体の窓口に相談する方法があります。
電線に触れそうになっている
電線に接触するおそれのある枝は、自分で対処すべきではありません。感電の危険があるため、電力会社の窓口に連絡して対応をご相談ください。
業者に依頼する際の確認点
越境が関わる剪定は、通常の剪定より確認事項が増えます。どこまで剪定するのか、どちらの敷地から作業するのか、剪定した枝は誰が処分するのかを確認します。 これらを曖昧にしたまま当日を迎えると、現場で判断できずに作業が止まります。
01どちらの敷地から作業するかを決める
越境した枝を剪定する際、隣地側に立ち入る必要が生じることがあります。他人の敷地に無断で立ち入ることはできないため、立ち入りの可否を事前に確認し、必要であれば承諾を得ておきます。
02剪定する範囲を図と言葉で共有する
「はみ出している分だけ」という伝え方は、現場で解釈が分かれます。どの枝をどこまで剪定するのかを、写真に印を付けるなどして共有しておくと確実です。
03剪定した枝の処分先を決める
越境部分を剪定した場合、その枝をどちらが処分するかで問題になることがあります。作業の依頼時に、処分まで含める契約かどうかを明確にしておきます。
04作業前後の写真を記録する
作業の範囲を後から示せるようにしておくと、認識の相違が生じた際に役立ちます。業者に写真報告を依頼できるかどうかも確認しておくことをおすすめします。
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よくある質問
Q. 隣から伸びてきた枝は、勝手に切ってもよいのですか。
A. 原則として、越境した枝は木の所有者に切除してもらうことになります。ただし、所有者に催告しても相当の期間内に切除されない場合、所有者やその所在が分からない場合、急迫の事情がある場合には、越境された側が自ら切り取ることが認められています。自分の事案が要件を満たすかどうかの判断は慎重に行い、迷う場合は専門家にご相談ください。
Q. 枝と根で扱いが違うと聞きましたが本当ですか。
A. はい、異なります。民法では、境界を越えた枝については所有者に切除させることができるとされ、一方で境界を越えた根については自ら切り取ることができると定められています。枝と根で条文上の扱いが分かれているため、同じ「越境」でも進め方が変わります。
Q. 2021年の民法改正で何が変わったのですか。
A. 改正前は、越境した枝について所有者に切除させることが原則で、自ら切る場面が限られていました。改正により、催告しても相当の期間内に切除されない場合、所有者やその所在が分からない場合、急迫の事情がある場合には、越境された側が自ら枝を切り取れることが明文化されました。この改正は2023年4月1日から施行されています。
Q. 切除にかかった費用は請求できますか。
A. 費用の負担については事案によって扱いが分かれやすく、一律には判断できません。金額が大きくなりそうな場合や、相手との認識が異なっている場合は、作業に着手する前に弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。
Q. 自分の木が隣家にはみ出していると指摘されました。
A. 早めに剪定で対応することが基本です。放置すると相手が自ら切除できる要件に近づき、木の形も意図しない切られ方になる可能性があります。どこで剪定すれば木への負担が少ないかは樹種によって異なるため、剪定の適期とあわせて業者にご相談ください。
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